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COLUMN食旅紀行

『素 敵』 な出逢い

 

「家の食事」と「外の食事」。

一体何が違うのだろう。なぜ変わるのだろう。そう考えるようになったのは、僕が大人になってからのことだ。

 

僕が考えるに、食事には二つの顔がある。

まず一つ目。それは、家でのご飯。家庭では、食事のことを「ご飯」という。「お母さんご飯まだぁ」というあのご飯だ。時々、ふんぞり返って「おい、めし」っていう人もいるが、ここでの「めし」とは、米を炊いた飯だから、それもやっぱりご飯だ。「腹減ったぁ」とか「あぁお腹が空いた」とか言いつつ食べるご飯とは、突き詰めれば生命を繋ぐための食事。もちろん、家の外で「ご飯」という時も、やっぱりそれもお腹を満たすための食事だろう。

 

二つ目は、わざわざ外に出掛けて頂く食事。外食と普段呼ぶものだ。前者が生命維持の「腹を満たす」食事だとすれば、後者は「心を満たす」ための食事とでも言ったらいいのだろうか。外食では、テーブルを囲む人々が伸び伸び食事をして会話ができる。日々食事を整える母親も、この時ばかりは一切の仕事から解き放たれて、何一つ気にかけることなく食事を楽しむことが出来る。外食は、謂わば「上げ膳据え膳」の食事。

 

この二つの食事を服装で例えるなら、普段着と外出着の違い、あるいは外出着だったら、カジュアルとフォーマルの違いになるのだろうか。

TPOによって装いを変えるように、食事にもTPOがある。大方の人は、結婚式や長寿祝いといったお祝いの席、あるいはデートや接待の席には、フォーマルな装いで出掛ける。

例えばパーティーや披露宴。皆それぞれに精一杯のお洒落をした人々で一杯だ。格好良い人や綺麗な人色々。きっと、装う段階から心躍ってワクワクして、期待で胸を膨らませているはずだ。

 

僕らも来店者の期待を裏切らないように、格好良く身なりを整えて応対する。料理を預かる人間もまた、相応の心構えをする。それは礼儀以外の何ものでもないからだ。料理は来店者の装いに相応しく、料理は精一杯「べっぴんさん」に仕上げて、出来立ての初々しいうちに、お披露目のテーブルへと送り届ける。

 

もちろん、料理を取り立てて装わせなくても皆様を満足させるくらいの自信は僕にはある。けれども、料理に綺麗な装いを施してあげると、より一層べっぴんさんになるはずだ。やはり見た目は重要だし、味のうちだ。

 

何もそれはお皿の中のだけの話ではない。アイロン掛けされたテーブルクロス、丁寧に磨かれたカトラリー、輝くグラス、そして見目麗しい食器類。それらは全て、料理が纏う衣装でもある。なぜなら、食事というものは、料理を口にする前からすでに始まっているからだ。同じ中身の料理でも、器やセッティングに心を配られたものとそうでないものとでは、格段の差がある。料理人が愛情をもって繊細に盛りつけた料理や、注意深く整えられた設えは、自ずと気品が漂う。

 

それは人も同じ。愛情いっぱいに大切に育てられた人は、必ずや立派な人格者となる。その人物が、さらに素敵な衣装を身につければ、誰しもが惚れ惚れとする魅力ある人になるはずだ。僕はそうした方々の姿を目にする度に、うっとりとしてしまう。

 

素敵な装いで皆様が来店されるのだから、僕らも、料理も、そして何もかもドレスアップさせて、素敵な姿でお迎えしたい。

今日も明日も、素敵な人たちと、素敵な出逢いのために…。